大阪地方裁判所 昭和36年(わ)4737号 判決 1963年9月17日
被告人 高武雄 外四名
主文
被告人尹義春を懲役六月に処する。
但本裁判確定の日より参年間右刑の執行を猶予する。
被告人仲山正時、同和田玉吉、同高武雄、同堤正信、同尹義春に対する公務執行妨害罪の公訴事実につき被告人等はいづれも無罪。
理由
犯罪事実
被告人尹義春は別紙記載の通り田口文男、金忠一、金谷義明、姜百元及び通称みつおこと氏名不詳者等と共謀の上、昭和三十五年十月三日から同年十二月二十一日までの間八回に亘り、大阪市福島区上福島南通三丁目十六番地先路上ほか七ヶ所に於て、浅西昇他七名所有の原動機付自転車六台及び軽自動車二台(価額合計六十二万円相当)を窃取したものである。(別紙一覧表添付)
証拠の標目(略)
適条
判示各所為は 刑法第二百三十五条第六十条
併合加重につき 刑法第四十五条前段第四十七条第十条(別表<4>の窃盗罪の刑に加重)
執行猶予につき 刑法第二十五条
無罪の部分に就て
被告人仲山正時、同和田玉吉、同高武雄、同堤正信、同尹義春に対する公務執行妨害罪の公訴事実の要旨は、
「被告人等は何れも大阪市生野区周辺を根城とする暴力団金田組の組員であるが、被告人等は共謀の上、昭和三十六年九月二十四日午前十時十分頃大阪市東成区大今里南之町一丁目九十八番地小料理店「マヤ」に於て同組準幹部小国正勝を住居侵入の被疑者として逮捕し、更にその共犯者の同組準幹部秦太一及金貞男両名も同家に潜伏しているものとして両名を通常逮捕する為同家二階の捜索をしようとして二階々段に通ずる階下三畳の間に上らんとした大阪府警察本部刑事部捜査第四課警部補崎山宏他十名に対し、三畳の間入口に一団となつて立塞がり口々に「お前等は肩書きでしかようもの云わんか、服を脱いでわし等のように裸でやれ、サシでやつたる」「これより中へ一歩でも入つたらわし等もやるだけのことはやる。入るなら入つて見よ、来い」等と暴言を吐き、この上捜索を強行するに於ては如何なる暴力をも振りかねない気勢を示して脅迫し或は椅子を振り上げて殴りかゝり胸のあたりを突き飛ばす等の暴力を加え、同警部補等の公務の執行を妨害したものである」
と云うにあるが、
本件に顕れた全証拠を綜合して検討するにほゞ次の如き事実を認定し得る即ち「当時警部補崎山宏は制服三名を含む警察官約十二名にて昭和三十六年九月二十四日午前十時過頃住居侵入罪の被疑者小国正勝、同秦太一、同金貞男に対する逮捕状を執行する為逮捕状三通を携帯して大阪市東成区大今里南之町一丁目九十八番地小料理店「マヤ」(金田組事務所住居主金田秀雄)に赴いた。
これは右小国正勝の居ることは確実なるも秦並金は居るかどうかわからないが二階には五、六人の組員が居るとの情報に基きなされたものである。而して警察官等は右同店一階入口土間に於て先ず被疑者小国正勝を逮捕し更に秦並金等両名を捜索する為同店二階を見せる様要求するや、同店階下三畳の間に居つた被告人和田等及このさわぎに二階より降りてきた被告人高、同尹、同仲山、又外出より帰つて来た被告人堤等は家の中を見たいなら令状を見せよと崎山係長等に捜索令状の呈示を求めた、然るに崎山係長は秦及金に対する捕捜状を所持することを秘し物の捜索でなく上記被疑者両名の逮捕の為の捜索であるに拘らず、捜索令状はないが被疑者小国正勝逮捕の現場では物の捜索が出来るのだと説明し、被告人等を説得しようとしたが被告人等は之に納得せず為に崎山係長は右組員の中から責任者として名乗り出た下田耕一と同店外に於て更に前記趣旨の説明を試みたが下田も令状の呈示を強調して納得せずに終つた、従つて崎山係長等は再び同店内に引返し階下三畳の間の被告人等に最後の説得を試みたが被告人等の態度は以前と同様であつた為、崎山係長の命令のもとに立会人なくして被疑者二名の捜索の為警察官等は階下三畳の間より二階へ上らんとするや被告人等は「お前等は肩書でしかようものを云わんか、服を脱いでわし等のように裸でやれ、サシでやつたる」「これより中へ一歩でも入つたらわし等もやるだけのことはやる、入るなら入つて見よ来い」等の暴言を吐き或は椅子を振り上げて殴りかかり、警察官の胸のあたりを突き飛ばす等の実力行使をした。
但し当時「マヤ」には被疑者秦及金の両名は現在しなかつたので発見することが出来なかつた」との事実関係である。
之に対し弁護人は本件公務執行々為は違法であるから被告人等の本件行為は正当防衛であるから無罪であると主張し、その違法であるとの理由として、
(一) 警察官等は本件職務行為の内容を被告人等に告げていないこと
(二) 本件の捜索に立会人のないことを述べている。従つて以下弁護人の主張を基にして、
第一、本件に於ける警察官の公務執行々為の適法性の有無
第二、仮に本件公務執行々為を違法とするならば正当防衛を認め得るや否の二点
につき当裁判所の見解を述べることゝする。
先ず第一の本件公務執行々為の適法性の有無に就て検討するに、即ち、
その(一)は刑事訴訟法第二百二十条所定の必要性の点
(二)は警察官が職務執行々為の内容を被告人等に告知することの要否及逮捕状をも呈示すべき義務あるや否の点であり
(三)は立会人の要否の三点に要約される。
されば、
(一) の点に就て刑事訴訟法第二百二十条は「検察官、検察事務官又は司法警察職員は第百九十九条(逮捕状による逮捕)の規定により被疑者を逮捕する場合又は現行犯人を逮捕する場合に於て『必要があるとき』は左の処分をすることができるとしてその第一号に「人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内に入り被疑者を捜索すること」と規定している。即ち、通常逮捕現行犯逮捕等の為に他人の住居等に立入り被疑者を捜索する事は自由勝手に出来るのではなく『必要があるとき』である。即ち被疑者が人の住居に現在することの高度の蓋然性が必要なのである。然しこの必要性の判断は捜査機関の主観のみに任せられるのではなく客観的にも当然その必要性の認められる場合でなければならぬことは云う迄もないことである(札幌高等裁判所函館支部昭和三七年九月一一日判決、高等裁判所判例集第十五巻第六号五〇三頁参照)。然らば本件の場合被疑者小国正勝を階下土間で逮捕した後被疑者秦並金が二階に現在する高度の蓋然性があつたか否と云う点であるが当裁判所はこの点につきかかる蓋然性は極めて乏しかつたと判断する。即ち、崎山係長等は居ると思つたであろうが、後述の如く警察官等が「マヤ」に到着して説得行為を試みこれが達せられなかつた為捜索を強行するに至る迄の時間は約四十五分の長きに亘つて居りこの間同店階下土間は警察官が出たり入つたりしている上二階を見せよ見せないの応酬で相当にさわがしたこと、被疑者小国正勝でさえも自分に逮捕状の出ていることも知らず警察官に呼ばれて二階から下りてきている点よりして被疑者秦並金がもし二階に居つたとしても小国同様逮捕状の出ていることは知らなかつたと思われる。
されば、階下のさわぎは何んだろうとついさそい込まれて降りてきていると思われる(小国及秦の逮捕状は昭和三十六年九月十八日、金の逮捕状は同月二十日発付されており又知られていないと思つたればこそ警察官は被疑者の名前を云うていないのであるから……)現に被告人高も小国が降りて間もなく階下がさわがしいと云つて降りてきているのである又情報通り被告人等六名及下田を含む計六、七名が階下三畳の間に全部顔を揃えていたのであり店の二階に被疑者二名の現在する功算は極めて少なかつたと見るべきであり此の点に関する判断はやゝ妥当性を欠くものである。
次で
(二) 警察官が意図している公務執行の正しい内容を告知すべきや否の点である。当裁判所は此の点告知するどころか逮捕状を捜索を受ける者にこれを示すことを要するものと解する。
即ち憲法第三十五条は「何人もその住居、書類及び所持品について侵入捜索及び押収を受けることのない権利は第三十三条の場合を除いては正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ侵されない」と規定し憲法第三十三条の場合を除外しては住居、書類及び所持品につき侵入、捜索及び押収を受けることのない権利を保障しているのである。
此の憲法の精神は原則として差押状又捜索状によることを要するも現行犯人として令状なくして逮捕する場合及令状により逮捕する場合のみ極めて例外的に上記令状なくしてこれら強制処分が許されると云う趣旨である。これに基き刑事訴訟法第二百二十条の規定があるのである。処で刑事訴訟法第百十条は差押状又は捜索状は処分を受ける者(住居主等)にこれを示さなければならないと規定し憲法の保障する基本的人権を制限するものであるから令状によるものであることを明示する様要求しているのである。然らば刑事訴訟法第二百二十条の場合に於ても現行犯人逮捕の場合はともかく通常逮捕の場合にして逮捕状を所持する場合はこれが捜索状に代る保障機能を果すものであるから捜索を受ける者に之を示すことを要するものと解しなければならない。
即ち現行犯逮捕や緊急逮捕の場合に逮捕状がなくても逮捕の正当なことは客観的状況自体で保証されているのであるが通常逮捕状によるそれの場合は逮捕状があつて初めてそれが保証される状況にあるのであるから逮捕状による捜索の場合もその正当性を保証する為之を示す必要があると云うべきである。
これは刑事訴訟法第二百二十二条に於て第百十条の規定は検察官検察事務官又は司法警察職員が第二百二十条の規定による押収又は捜索に準用するとしている処から明白である。(団藤教授は準用規定のない第百二十六条の勾引状等の執行の場合でさえ当然呈示の必要ありと述べておられる条解刑事訴訟法二三七頁第二項参照)
従つて本件の如く逮捕状を所持して人の住居等に於て被疑者の捜索をなすべき時は当然之を看守者と目される下田に対して示さなければならない。然しこれによつて逮捕状の発付のあつたことが被疑者に漏れ捜査活動に支障をきたすと云う者があるかも知れないが前記(一)の必要性を無視して手あたり次第に他人の住居を捜索すれば右の如き結果になろうし、又その様な心配もあろう、然し厳格に必要性を判断しその枠の中で行われゝば被疑者を逮捕出来ないこと自体が稀であり従つて右の如き事実が漏れるが如きことも極めて稀であろう、「居らねば見られ損」となつて不利益を蒙る為前記必要性の判断は一層慎重となり、被疑者の現在する高度の蓋然性のなき限り執行しなくなり、よつて刑事訴訟法第二百二十条の規定と憲法第三十五条の規定とのバランスがとれることになる。
従つてかゝる厳格規定たる重要な手続を欠く本件の公務執行々為は此の点に於て単に不適法と云うだけでなく違法であると云うべきである(大阪高等裁判所昭和三二年七月二二日高等裁判所判例集第十巻第六号五二一頁参照)
次で
(三) 刑事訴訟法第二百二十二条第一項に於て第二百二十条の場合に第百十四条を準用しているので通常逮捕現行犯逮捕等の為、人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若くは船舶内で被疑者を捜索する場合には住居主若くは看守者又はこれらの者に代るべき者をこれに立会わせなければならない、これらの者を立会わせることができないときは隣人又は地方公共団体の職員を立会わせなければならない事になるのであるが、第二百二十二条第二項により急速を要するときは立会人を要しないと規定されている。
而してこの急速を要するとは即ち「執行の必要が被疑者の逃走の危険の為急迫し立会権者が立会う為に必要とする時間執行を延引することの出来ない場合」であると解せられるが此の規定は捜査官の強制処分の形式的公正を維持することと憲法に保障された国民の住居権の保護を目的としたもので即ち職務の公正保証と個人の利益保証に重点があり単に公務員に対する訓示的規定に過ぎないと解すべきでない(後記判例参照)従つてこの例外規定も亦厳格に解釈されねばならない、尚刑事訴訟法第百十四条第二項後段の「これらの者を立ち会わせることができないとき」とは立会人のない場合のみならず立会を拒否された場合をも含むことは勿論である(ポケツト刑事訴訟法第二一八頁参照)さて本件を見るに家宅捜索は立会人なくして行われているのであるが崎山係長はその理由として「マヤ」の表に人だかりが多勢あつてその状態から応援がかけつけて妨害したらいかんと、又捜査員との間に摩擦を生じてお互に危害をうけることになれば非常に具合が悪いと思つたと供述しているのである。これが即ち急速を要するときと判断した理由の様であるが当時の警備体制を見るに前記約十二名の警察官が一応「マヤ」の内外の警戒に当り就中土地の事情に詳しい松坂刑事が同店外の見張り特に屋根伝いに逃走しない様警備していたのであり本件「マヤ」の階下には出入口が二ヶ所あるのみであつた、従つて被疑者等両名が「マヤ」にもし居つたとするならば文字通り“袋の鼠”であつた。
されば崎山係長も直に捜索を強行せず多少時間を取つても逃げられる心配がないと判断したからこそ被告人等に立会方を求め約四十五分もの長時間に亘り説得を続けたのである。
然し結局説得出来なかつたので崎山係長の言葉を借りると事態は遽に一変して急速を要する事態になつたと云うことになるのであるが何等事態は急変していない唯「マヤ」の表入口に多数の人が集つてきたことゝ応援の警察官が約十名馳けつけてきたことである。
野中の一軒家の家宅捜索と異り大都会の真中で十数名の警察官が三、四十分もの長時間一軒の家を包囲すれば所謂ヤヂ馬の集つてくることは当然で予想の出来ることである。これを承知で説得行為をしながらこれを以つて直に応援団が来援すると思つたと云うことは崎山係長の思い過ごしも甚だしい。即ち被告人等の中から同店外に注進の為飛び出した者があるとか又はかゝる情報があつたと云うならば格別かゝる事情のないのにこの様に考えたとするならば之は根拠のない単なる想像に過ぎない。この程度の想像で例外規定が適用されたとするならば気候が変調で地震の心配があり又家屋が密集しているので火事の心配があつたので急速を要すると判断したと理由づけをすれば此等の場合も亦許されることゝなりこの例外規定を置いた趣旨は忘却される結果となる、立会人は事態により予め用意することも出来ようし又一応適格者の立会を求めてみてその結果により早急に強行すべきか否かを決定しても決して遅くないと思われるのに本件に於ては此等の手段を講ずることなく安易に強行したのである、これは本件の警察官の当初の判断の誤り、不手際をよいことにしてかゝる重要な規定を自己に有利に解釈したもので到底これは許されない。従つて本件の立会人なくしてなされた家宅捜索は此の点に於て不適法と云うだけでなくこれ亦違法の公務執行々為である。
以上の如く本件の公務執行々為は之を違法と解するならば第二被告人等の本件行為は正当防衛として許さるべきである。なぜならば、
被告人等は本件「マヤ」の住居主金田秀雄夫妻の不在中留守をあずかる者で本件住居の看守者又はこれらに代るべき者である。従つて仮に本件「マヤ」が暴力団の本拠と雖も其の住居の静謐は憲法の保障する処であらねばならない。警察官等は前記(一)(二)(三)の手続違背に拘らず敢て被疑者秦、金両名逮捕の為被告人等の拒否するにも拘らず二階に通ずる階下三畳の間に進入し捜索活動を遂行せんとしたものであつて住居主及被告人等の住居権に対する侵害は既に開始せられ被告人等はその執行中之を防止せんとして本件行為に及んだのであるから、住居権に対する急迫不正の侵害に対し権利防衛上実に必要己むを得ざる処置であると認めざるを得ないから正当防衛として犯罪の成立を阻却すると云うべきである。(この点に関して同趣旨と思われる明治憲法下の判例があるが国民の権利をそれ以上に尊重している現在の憲法下に於ては当然である。宮城控判明治四二、三、一新聞五六四一六参照)
尚検察官は仮令本件公務執行々為に立会人等がない為違法であるとしても被告人等は捜索令状がないと云うことを違法と考え暴行等に及んだのであつて公務執行々為を客観的に違法とする理由と被告人等が主観的に違法と考えたそれとが異るから正当防衛は成立しないと主張するものゝ如くであるが正当防衛は客観的に急迫不正の侵害があり、被侵害者が防衛する為であれば足りるのであるから本件に於て正当防衛の成立することは当然の事であつて検察官の主張は採用出来ない。
最後に本件を通じて三つの事項を指摘することが出来るその(一)は指揮者の部下の捜査員に対する捜索目的の不徹底である事である。指揮者たる崎山係長は小国、金、秦の逮捕目的のみの捜索であると証言しているに拘らず物の捜索が主で人の逮捕は次であると証言している部下の警察官がある(三八九丁、三六三丁、三六四丁)この様に指揮者の意図する処と部下の捜査員とのそれとが異つているからしばしば現場で不必要なトラブルが起り国民の権利を必要以上に侵害することになる。次でその(二)は強制捜査権を行使する警察官が刑事訴訟法等関係法規を充分理解していない点である。即ち本件に於て取調べた警察官の中には小国の逮捕現場では人も物も捜索できるとの見解ですと供述して居り(三三九丁、三四八丁)この時まで同様の見解をもつていた警察官も他に居つた様に思われる。又捜索に立会人が居らなければ警察官の立会でよいということになつていると証言した者もある(三九三丁)のみならず先に本件の捜索は物の捜索であると証言している警察官も立会人の必要を係長に主張した形跡もなく結局立会人なしに捜索をしている物の捜索には例外規定はないのであるから立会人は絶対必要の要件である、かくの如く本件の警察官は法を知らないのか、故に法を無視しているのか判断にくるしむものである。その(三)として最も好ましからざることは本件に於ける崎山係長等のやり方の極めて不公正であることである。即ちいかに平穏に事を運ばんと考慮したとは云え被告人等の法律の無智に乗じ小国の逮捕現場では物の捜索も出来るんだと物の捜索の意思もないのにかゝる嘘言を以て被告人等を納得させ所期の目的を遂行せんとしたのであつて国民を愚弄するも甚だしい。かゝる警察官に強大なる強制捜査権を与えることは憲法の保障する国民の権利を危殆に陥し入れるおそれなしとしない。
かくの如く本件は警察官に多数の反省すべき問題を提供している警察官はこれを機会に卒直に反省すべきでありその結果国家の公権力は如何に公正に行われなければならないかと云う事を認識し且つ国民の権利が充分に尊重される結果となるならば当裁判所が本件に於て許すべからざる被告人等を許したことにより国家国民がこれにより失う所のものよりこれにより得る処のものがはるかに大なるものがあると確信する。
以上の如く結局本件公訴事実は罪とならないので刑事訴訟法第三百三十六条により無罪の言渡をする。
(裁判官 森山淳哉)
別表(略)